企業が経済的な危機に瀕した場合、全ての財産関係を清算した上で事業活動を終了する清算型の倒産処理と、従来の財産関係に変更を加えつつ事業の継続を図る再建型の倒産処理があります。清算型倒産処理の典型は破産手続きであり、後者の再建型倒産処理には、民事再生及び会社更生があります。ここでは、民事再生と会社更生についてご説明します。
民事再生は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得て、かつ裁判所の認可を受けた再生計画を定めることによって、債務者の事業や経済生活の再生を図る手続きで、再建型倒産処理の基本型となります。
民事再生は、株式会社だけでなく、法人一般を対象としています。
そして、民事再生の最も大きな特徴は、債務者自身がその手続きの遂行者となるDIP型(debtor in possession)が原則とされているところです。ですので、旧経営陣が退陣せずにそのまま経営を続けることも少なくありません。ただし、裁判所の監督には服しますので、裁判所に任命された監督委員の監督を受けることになります。また、担保権は別除権として手続きの外で行使されます。
民事再生は、債務者自身で再生計画案を立案でき、比較的短期間で再生計画案の認可決定が出ますので、企業の規模に関係なく、事業の再建を考える多くの企業で利用されています。
法人の民事再生申立てには、弁護士費用の他に、印紙代と郵券代(おおよそ2万円程度)、更に裁判所への予納金が必要となります。
東京地方裁判所の場合の法人民事再生の予納金は、負債総額によって以下のようになります。なお、規模によって増額する場合もあります。
負債総額 | 予納金 |
---|---|
5,000万円未満 | 200万円 |
5,000万円~1億円未満 | 300万円 |
1億円~5億円未満 | 400万円 |
5億円~10億円未満 | 500万円 |
10億円~50億円未満 | 600万円 |
50億円~100億円未満 | 700万円 |
100億円~250億円未満 | 900万円 |
250億円~500億円未満 | 1,000万円 |
500億円~1,000億円未満 | 1,200万円 |
1,000億円~ | 1,300万円~ |
会社更生は、再建型の倒産処理手続きですが、民事再生と異なり、株式会社のみを対象としています。また、債権者数及び債権額が多い比較的規模の大きな株式会社の再建を想定していますので、手続きは厳格で複雑になっています。
会社更生の場合、開始後に裁判所から管財人が選任され、旧経営陣は通常退陣します。また、担保手続きも手続きの中で処理されることになりますので、担保権者は更生手続きに参加しなければ担保権を実行できなくなります。
会社更生では、債権者が多く、多数の利害関係人の調整を図るために手続きが厳格化されていますので、民事再生よりも終了までに長期間を要することになります。
会社更生の申立てには、弁護士費用の他に、東京地方裁判所では、印紙代と郵券代(おおよそ6万円程度)、更に裁判所への予納金が必要となります。
裁判所の予納金の額は、破産や民事再生のように負債総額によっては決められておらず、会社の事業内容や財産状況、債権者数等を考慮して決められます。なお、東京地方裁判所では、最低2,000万円以上、上場企業の場合は最低3,000万円以上とされているようです。